ノマド探求

二次元移住準備記

当たる確率を上げる。

ロトくじを購入する際は、完全に運頼みで数字を選んでいる。人の縁にチャンス到来、棚からボタ餅、ラッキースケベと人生のあらゆる局面において、私は運に左右されてきた。未来を予知する能力でも備わらない限り、どの数字を選んでも同じことだと考え、精神統一して頭に思い浮んだ数字を適当にポチポチしていた。運も実力のうちだが、これが全く役に立たず一つも数字が当たらないことがざらにある。最低6億円、最高10億円をこの手に納めるため、どうすれば良いか思案してみた。

まず聞きかじった話だと、理論的にはどの数字も出る確率は全て等しいようだ。良く出る数字、あまり出ない数字と出現率が偏っているように見えても、回を重ねる毎に出現率はどの数字も等しくなっていく。例えば数字の1は十回出て、5は一回も出ていないとすると、1の方がラッキーナンバーのように感じるが、実は5の方が次は出やすくなるのだ。だから良く出る数字よりも出ていない数字を選ぶ方が、当たる確率は高くなる。それから、1234567の連番を選んでも良い感じに数字を散らせて選んでも、当たる確率は等しい。心理的なバイアスがかかるのか、1234567の連番は買いにくい。心理的なバイアスによって判断を誤る状況は、数多く日常生活でも遭遇する。この辺は己れとの勝負になる。

理論的には数字の出現率は等しいが、抽選方法は神様がサイコロを振るわけでも、厳密なアルゴリズムに基づいてスーパーコンピューターが抽出するわけでもない。商店街の抽選会よろしく、数字の書かれたうずらの卵大の玉が入ったミキサーのような抽選機が、ガラガラポンと7個の玉を排出して数字が選ばれる。この何のロマンも抱かせない、恐らく発注費のいくらかは役人がポッケにナイナイしたであろう安っぽい機械が、毎週私の運命を決めるのだ。数字が書かれた37個の白い球は理論上は全ての寸法と重さが等しい完全な球体だ。しかし、商店街の抽選会では誤差で済まされても、最低6億円、最高10億円のロト7では看過できない物理的な個体差がある。書かれているにせよ彫られているにせよ、数字によっても微妙に玉のバランスは崩れてくる。ロトくじの抽選毎に排出された玉を無造作に抽選機に入れていれば、抽選開始時に抽選機の下にあるか上にあるかで出現率も変わってくるはずだ。これらの偏差を考慮すれば、当たる確率は微かでも上がるだろう。

こんなことに頭を使うぐらいなら他のことに頭を使えという話だが、何か商売を始めるよりも運を頼みにした方が、私の実力では一発を当てる確率は高い。人の持っている運が全て等しいのであれば、一千万円ぐらいは運だけで手に入れても誰も文句は言うまい。ただ最低6億円、最高10億円を運だけで当てるとなると、まずまずの恵まれた環境で生まれて育ってきたので、そこまでは残っていないと思う。だから完全に運頼みではなく、頭を使うか神頼みをして当たる確率を上げていきたい。

どこのコミュニティに参加するか。

海外移住の準備として、移住候補先のコミュニティに今から参加することにした。問題は、どこのコミュニティに参加するかだ。地理的時間的金銭的な制約から、移住候補地に在住する人たちのコミュニティに参加することは、厳しい気がする。頻繁にその国を訪れるのであれば、まだ参加できる機会はあるが、誘われても二つ返事を返せないと参加し続けることは難しい。かと言って日本のコミュニティに参加しても、移住してしまったら疎遠になってしまう。

同じ環境もしくは近い環境で生活していることは、コミュニティを築く上でとても重要なことだ。仕事の後によく飲みに行き、仕事以外でも交流のあった同僚でさえも、職場が変わってしまえばそのうち会わなくなってしまう。これは生活環境が離れてしまったことに起因する。そもそも今ですら、職場以外のコミュニティには参加していない。休みの日に人と会うことはあまりなく、家で過ごすことは多い。掃除や洗濯などの家事で半日は潰れてしまうし、勉強したり思惟に耽たりしていると外出する余裕もなかったりする。人と遊ぶのは嫌いではないが、独りで遊ぶのも嫌いではない。交友関係を拡げる機会も意欲も乏しいのが現状だ。

以前の職場で終業後や休日はほとんど遊びに出かけている、やたらに交友関係が広い同僚がいた。その同僚は、バイクやダイビングなど趣味をたくさん持っていた。話のネタは尽きず、また人を楽しませる気遣いもあって、よく飲みに誘われていたのを覚えている。親密な人間関係を築くのであれば、人生観が似た人たちで作るコミュニティに参加することが望ましい。人生の成功者を僻む以外に話のネタは欲しいので、何か趣味は必要だ。共通の趣味が切っ掛けとなり、コミュニティへの参加を誘われることも期待している。理想はニートやフリーターで構成されるオンラインゲームのオフ会だ。しかし、今時間を潰していることで趣味に昇華できそうなことは何もない。コミュニティを探す前に趣味を作るとしても、スポーツには興味がないし特殊性癖もないしで、はてどうしたものか。

ロトくじが擦りもしない。

海外移住の準備として、何か副業を始めようとずっと考えている。最初は小説でも書いて一発当ててやろうと思い、去年から色々と構想を練っていた。しかし、執筆作業に移ると書き始めることができず、そのうち面倒臭くなって放置したままになっている。まだ諦めてはないが、また無職を拗らせた時の暇潰しと精神安定の手段として取っておくことにした。

小説を書く代わりに、今年の初めからロトくじを買い始めた。宝くじの購入を副業と言えるか微妙だが、会社勤めの傍らに株とかFXとかの投機で小銭を稼いでいる人もいる。ロトくじだって真面目に突き詰めれば立派な副業になるはずだ。ロト7は一口三百円なので初期投資の金額も微かだし、投機と違い大損こくこともない。37個の数字から7個の数字を選び、全部的中させると一等賞になる。一等賞が当たれば最低でも六億円、最高で十億円が転がり込む。副業よりも本業と言ってもいいぐらいだ。買い始めた当初は、一等賞が当たれば移住先で億ションを買ってもまだ一生遊べるお金が残っちゃうし、財団でも作って恵まれない美少女を学校に行かせてやろうかなと、妄想を膨らませていた。しかし困ったことに、これが擦りもしないのだ。

一回につき一口しか買っていないので、まだ損した気はしない。けれども当たる気もしない。健康のために一週間に一度と決めているラーメンに煮卵三個トッピングするなら、一週間先の大金に賭ける方が浪漫がある。ただ塵も積もれば聳え立つウンコで、一年間で煮卵144個分の損失になってしまう。二、三個の数字が外れるぐらいならまだしも、全く擦りもしない回も多々ある。今は勘だけを頼りに数字を選んでいて、未来の自分がタキオン通信を完成させない限り、完全に運頼みだ。未来の自分を信じてはいるが、統計学や確率論を勉強してもう少し当たる確率を上げようと思う。