ノマド探求

海外移住準備記

家計の熟達度。

たくさんお金を稼いでいなくても,日常生活を充実させることはできる。収入の多寡で経済的な余裕のみならず生活の中身まで比較してしまうが,支出によってもかなり生活は変わってくるものだ。

友人に週三日程度しか働かないが,上手に家計をやりくりして充実した生活を送っている人がいる。週三日の仕事で週五日分の収入を得ているわけではない。同じ物を可能な限り安く買うことで,収入を補っているのだ。自転車で県境を越えてマメに格安量販店に買い出しに行くし,旨い寿司屋のランチを食べるために長蛇の行列にも並ぶ。あまり働いていないので時間があることは確かだ。しかし,その時間を有効に利用して,金に換えているとも考えられる。そして,ケチケチしているが吝嗇家ではなく,支出のメリハリをつけることで生活水準を落とさない工夫をしている。

彼の家計の収支は非常に計算されていて,働きたくないから働かない,では少ない稼ぎでどうやって生活を充実させるかについて考え抜かれている。話を聞くと友人と遊ぶことは多くないそうだが,友人が少ないのではなく,無駄な人付き合いをせずに出費を抑えているためだ。また,外食は滅多にしないが,食への関心が疎かになっているわけではない。牛丼を食べる金で賞味期限間近の高級チーズなどを買って家で楽しんでいる。休みの日は公園を散歩し,図書館で借りてきた本を読む生活だが,海外旅行に行って高級料理店で腹を満たすだけの金はある。物だけでなく,行動や体験までも金銭に換算することで,常に費用対効果を意識して生きている。その徹底した意識は,もはや日常生活が宗教と言えるまで洗練されているように思える。

彼は株の売買を二十年近く続けており,トータルで月に三,四万円のお小遣いを稼いでいる程度の売買益を上げている。株の売買をやったことのある人は分かるが,これだけのリターンを得ることができれば立派な投資家と言っていい。いい物を安くで買って利益につなげる投資家の大原則を日常生活でも実践し,とことん無駄な出費を抑えることで経済的な余裕を作り出しているのだ。この経済的な観点は,資本主義の奴隷から抜け出そうとしている人でないと身につかないのかもしれない。友人のように資本主義の外側でひっそりと過ごす仙人のような人しかり,奴隷から抜け出すために資本家になろうとしている剣闘士のような人しかりだ。

私も家計を熟達させるために,会社には水筒を持って行き,キャリア以外のスマホを使うなど,支出を減らす努力をしているが,宗教に近いほど洗練した生活を送ってはいない。無駄金を使わない人生も味気ないが,移住した時に少ない生活資金で文化的な愉悦を味わうためには,この生活様式を実践することは必須となるだろう。