ノマド探求

二次元移住準備記

二十代の頃。

履歴書を書き直すため,二十代の頃に何をやっていたのか思い返してみる。そして,やはり,ほぼ記憶に残っていないことに気付く。

二十代の十年間は,働いてもいなかったし,遊んだもいなかった。何をやっていたのかと言えば,夢と言い切ることができない,おぼろげな何かを追うために必死で準備をしていたことだけは覚えている。だから,何をやっていたのか他人に伝えようとしても,いつも途中で辻褄が合わなくなり,支離滅裂な話になってしまう。結局,形としては何も残らなかったし,何をやっていたのか自分でも確かでない。それこそ,夢うつつに竜宮城にいたのと変わらない十年間だった。竜宮城で良い思いでもできていればまだマシだったが,煩悶と屈辱にまみれた屈折の日々だったから,さながら地獄巡りに近いのかもしれない。

この地獄巡りの最中に,世間体というものが,いかに人の目を濁らせるかを思い知った。日本人は無宗教と言われるが,この世間体の恐ろしさを味わえば,何かしらの強固な観念に基づいて社会が成り立っていることが分かるだろう。そして,日本で生きる限りは,その世間体から無縁でいられることはできない。二十代の頃は必死で抗っていたけど,四十歳を超えて,その気力もなくなってきた。移住に夢を託すのも,世間体の圧力から自由になるには,日本から離れてその束縛から逃げるか,圧倒的な資本力でそれを抑えるしかないからだ。ただ,十年間を抗い耐えたということだけは,誇りに思っている。あの頃は,まだゾンビではなかった。