ノマド探求

二次元移住準備記

理想と現実の乖離。

理想と現実というか,厳密には自分で考えている自身の市場価値と実際の市場価値の乖離を痛感した。

九月末で派遣の仕事を辞めた後,日本から離れるために家を引き払い,しばらく海外に住もうか迷っていた。八割は,また派遣で働きながら海外移住の準備を進めようと決めていたが,一割ぐらいは半年ほど旅行しながら今後の身の振り方について考えてみようという気持ちがあった。そして残りの一割で,Youtuberになってみようとか,全財産を仮想通貨に投資して博打を打ってみようとか考えながら,現実忘却に脳みそを費やしていた。

で,今月になって我に返り,再度派遣で働く準備として,新しい派遣会社に登録するため面談を受けることにしたのだ。面談を受ける前,自身の市場価値,つまりはどの程度の時給の求人に応募できそうか,提示されている応募条件と自身の職能,職務経験などを照らし合わせ,ざっくりとは見積もっていた。しかし面談を受けてみると,実際の評価額は思っていたより二割程度安かったことが分かった。派遣のシステムとして,派遣先の担当者と面接を受けるには,派遣会社の選考を通る必要がある。この選考に通らない限り,面接に連れてってもらえないのだが,これが通らないのだ。そして,派遣会社から職務経験などに見合った仕事として提示される求人が,自分の考えていた時給よりも二割ぐらい安い。

まぁ,時給が安いぐらいなら我慢できるが,勧められる仕事の内容がシステム監視だったりして,現実を痛感するというか落ち込むというか,なんともやりきれない。監視の仕事は二年ほどやっていたので経験としては十分かと思っていたが,またやるのかよと。システム監視はIT業界にデビューしたい人が就き易い仕事で,派遣の仕事になると業界初心者は監視かヘルプデスクから始める人が多いと思う。初心者歓迎,あなたもこれでエンジニアとか謳っている派遣会社が,ド素人を送り込む先はほぼこれになる。

監視の仕事がどういうものかは,警備員の仕事を思い浮かべると分かりやすい。パソコンのモニターにシステムの状態が表示されており,障害が発生したり異常な状態になったりすると対象の箇所が赤くなったりして教えてくれる。前の職場では,他の監視チームの話になるが,景気よくアラーム音が鳴り響き,でっかい赤色灯が派手に点滅していた。画面が赤くなったりアラーム音が鳴ったら,そのことを運用チームに報告する。ただ,それだけ。手順書に従ってアラームを消すなどの作業もあったが,基本は報告して終わりになる。IT業界の雰囲気を知るために誰でもできる職場体験のような仕事だ。

監視の仕事はできれば避けたいところだ。ただ,監視の仕事を辞めても,また監視の仕事に就く人が多いと,当時の同僚が言っていたことを思い出す。職場を変わっても,結局また監視の仕事に就くのでフルーツバスケットみたいだと。このゲームには,すごろくと違って上がりはないのが恐ろしい。賽の河原かシーシュポスか,同僚は今でも違う職場で同じような仕事を続けている。覚悟を決めて現実を受け入れるべきなのか,それとも家を引き払って日本を離れたほうが良いのだろうか。