ノマド探求

二次元移住準備記

少数民族の町。

ベトナムへの飛行機は、北部の都市ハノイの空港に着いた。南部のホーチミン、中部のダナン、いずれも日本から直行便は出ているが、日本語の通じるANAに乗りたかったので選択肢はホーチミンハノイしかなかった。格別ベトナムに思い入れがあるわけでもなく、飛行機に乗っている時間と飛行機代の安かったハノイを選んだ。

滞在期間は一週間なので、あちこち移動するとゆっくりできない。かと言って一箇所に留まっていても飽きてしまうのは分かっていた。ハノイが思いの外面白く、街の雰囲気が肌に合っていたら一週間丸々滞在するのもいいし、飽きたら近隣の街にでも行こうかなぐらいに考えていた。中部の街ダナンまでも深夜バスで十二時間程度なので、トイレさえ付いていれば、そこまで苦ではない。音楽を聴きながらウトウトとしていれば、半日などあっという間に過ぎてしまう。

初日は台風の直撃を喰らったおかげで、五時間遅れでハノイに到着。正確に言えば、前の日から空港にいたので二日目だ。予想通りベトナム滞在二日目でハノイに飽きたので、どこかに移動することにした。ハノイからは、ハロン湾とニンビンという世界遺産を持つ観光名所が割合近場にある。ハロン湾は青い海、ニンビンは黄金のライスフィールドで有名らしい。しかし、あいにく天気予報では雨の予想。雨に煙る東南アジアもロマンチックで好きなのだが、イマイチ乗り気にならなかった。そこで三日目の朝、唐突にサパという少数民族の町に行ってみようと思い立った。サパは棚田が有名で、何となく天気が悪くても絵になりそうな気がしたのだ。

サパまでは、ラオカイという中国との国境にある街までハノイから五時間ほどかけてバスで行き、ちょこっと観光をしてから違うバスに乗り換え、さらに一時間ほどかけて行った。サパは欧米人に人気がある町らしいが、中国人もたくさんいた。チンタラ歩いても一時間強あれば一周できるぐらいの小さい町だ。たいして期待していなかった割に、のんびりと満喫してしまった。観光地だけあって飲食店もたくさんあるし、棚田や山を見渡せるお洒落なカフェやバーもある。土産を売る少数民族の人たちも観光客慣れしていて、不快にならない距離を保ってくれる。滞在期間中、シトシトと雨も降ったりもしたが、特に大きく天気が崩れることはなかった。宿の屋外には町を見下ろせるちょっとしたラウンジのようなスペースが設けられていて、ここで音楽を聴きながらボケーっとしていた。宿の従業員も、この日本人暇なんだなぐらいに、隣の席でお茶をすすりながら放っておいてくれて嬉しかった。尻が痛くなったら町を散歩して、適当に飯を食ってマッサージを受けて、また宿に帰ってビールを飲んで、歩いて一時間ほどの少数民族の村に棚田を見に行っていたら、あっという間に夏休みが終わってしまった。