ノマド探求

二次元移住準備記

胃が疲れた。

冬休みの間、ほぼ毎日飲んでいた。何もやることがなくて暇だったし、寝る度に一日一日と仕事始めが近づき、鬱な気分をを紛らわす必要があった。しばらく疎遠になっていた友人や気兼ねなく誘える前の同僚と飲みに行き、現実忘却をしていた。冬休みが明けて仕事が始まり一週間経ったが、まだ飲みに行く機会は多い。飲み会は好きなのだが、酒はそんなに強くない。そろそろ胃に疲労が溜まってきた。胃が疲れると、精神状態にもその影響が波及する。

二十代の頃、東欧の暗い森と町が好きで、バックパック旅行をしたことがある。プラハなどの都市部では片言の英語でもストレスなく滞在できるが、都市部を離れると私の拙い英語は通じなくなり、現地語での会話となり意思の疎通が難しくなる。さらに、東欧は日が暮れるのが早い。冬になると午後四時には暗くなり、電灯だけが頼りになる。今から二十年前はスマホGoogle Mapもない。町を移動する際に交通機関が止まっていたり、道に迷ったりして、ちょっとでも到着が遅くなると、日が暮れかけていることは、ざらにあった。ホテルの予約サイトはその頃もあったが、インターネットカフェなどは田舎町にはない。言葉も通じず土地勘もない町に夜遅く着き、泊まる宿もなくポツネンとバス停に佇む羽目になった時、日本では体験したことがない不安に度々襲われた。身の危険はあまり感じなかったが、見知らぬ環境に圧倒されて思考の幅が狭まり、極端な考えしか思い浮かばなくなるのだ。そういう時は、まず最初に温かい食事を取ることにしていた。食事がなければ、温かいコーヒーでも良いので胃を温める。そうすると、不思議と精神状態が回復するのだ。自分の置かれた状況を冷静に判断し、色々な選択肢を思い付くようになる。

この時の経験から、今でも危急時は、まず胃の状態を確認するようにしている。腹が減っていたら、腹を満たす。胃が冷えていたら、温かい飲み物を飲んで胃を温める。また、何かを飲み食いする時間で、状況を判断する適切な間も取れる。胃を温めると脳みそが活発になる科学的な根拠があるのかは、分からない。ただの気持ちの問題かもしれない。それでも経験則から、少なくとも私には効果がある。しかし、そもそも胃が弱ってしまっていたら元も子もない。しばらくの間は摂生に努め、胃の回復を最優先事項とする。