ノマド探求

二次元移住準備記

徳。

最近、人間の徳について考えた。不遇な目に遭うとか、不幸な出来事が起きるとか、特に考え始めた切っ掛けはない。自粛生活が長引き、日常生活が倦んだため、哲学的な憂いを孕んだのだろう。憂いの揺籃となる、思索に耽る時間も十分ある。久しぶりに表で人と会った帰り道、生かされる価値のある人間とは誰なのか、ふと疑問に思った。目立った善行を積んでいる人は、周りにはいない。そもそも、徳の概念も確固たるものはない。ただ一つだけ、これが徳だなと思ったことがある。

徳のある人は、自分の精神状態がどんなにズタボロな時でも、他人の幸せを祝福できる人だと思う。人生が好調な時や幸福感の絶頂にいる時に他人の幸せを祝福しても、それはただの余興に過ぎない。自分がもう駄目だ、こりゃ積んだなと思っている時にこそ、人の本性が現れる。心の底から祝福できなくても、それは関係ない。その行為と態度を取ろうとする心意気が、賞賛に値する。

自己犠牲は共感できないし、語弊はあるが痴愚の類いだと思っている。精神状態が良くない時は、他人を妬むのは自然だし、他人が落ちていく様は実際に眺めて心地良い。一緒に地獄に引きずり込もうとまで思わないが、陰鬱な人生を一緒に歩む人がいれば、それは心強い。素直に内省すれば、そんな卑しい思いに行き当たる。そんな時は、自分は地獄に留まりながらも、遙か彼方で笑う他人の幸せを祝福できる強がりとも言える強さが、羨ましくなる。