ノマド探求

二次元移住準備記

過ぎ去った日々が、良く思える。

その時は面白くないなと感じていても、後々良かったなと思える時がある。数年前、インフラ監視の仕事をしていた時が、そういう時だった。モニターをずっと眺め、警報が出たら決められた手順に従ってコマンドを打ち、警報が消えなかったら誰かに連絡する、それをずっと繰り返す仕事だ。何だこれはと思っても考えることを止め、ひたすら手を動かし、理不尽な指示や指摘も仕事の一環として受け容れていた。IT業界に理想を抱き勉強を続けている若くて優秀な人は、監視の仕事がどういったものかを知ると、すぐに抜けていった。だからと言って、私のようにそこから抜け出せない人も、敢えてそこに居続ける人も、そういう人を恨みも羨みもせず、そういうものだと納得していた。

今でも監視の仕事自体は面白くないと思う。しかし、就労環境は理想に近かった。監視の仕事は日本語さえできれば、誰でもできる。だからその分、求人の間口は広い。前職がIT業界でない人はたくさんいたし、そもそも業種未経験どころか就労未経験のニートだろうと引き籠もりだろうと、受け容れていた。気長に応募し続ければ、どこかの監視の職場で雇ってもらえる。基本、監視の仕事は24時間365日で、三交代か二交代のシフトを組んで仕事を回す。なので席を埋めないとシフトが回らなくなるのだ。求人の間口が広ければ、色々な人間が来る。その中には仕事ができない、もしくは仕事をしないが人間的な魅力に輝いている奴がいる。仕事に力を入れていない分、趣味や性癖に生きる人を、監視の仕事が選ぶような気がする。

今でも、監視の仕事をしていた時に知り合った人で、お互いその職場を離れた後も良く飲みに行く友達がいる。逆に運用の職場を離れてから半年も経たないが、もはや連絡を取る人はもういない。運用の職場にはまともな人が多く、同僚は皆、良い人ばかりだった。けれども、仕事を辞めた後、飲みに誘う切っ掛け、連絡を取るネタが見つからない。人間的に駄目な人だと酒を餌に飲みに誘いやすいし、彼らの趣味や性癖に興味を示せば、彼らから会う切っ掛けを与えてくれる。二十年以上も前にアルバイトをしていたコピー屋も同じだった。仕事はつまらなかったが、人との出会いをたくさん得られた。テレワークで自宅に籠もり、PCを前に独り呆けていると、そういう職場がとても懐かしくなる。