ノマド探求

二次元移住準備記

引っ越しを諦める。

気付いたら賃貸契約の更新まで一ヶ月となった。今年の夏までは、引っ越す気は満々だった。忙しいながらも週末に時間を作り、思いを巡らしながら部屋を探していた。それが八月後半の夏休みに熱中症に罹って以降、引っ越す意欲は失せてしまった。今の派遣の仕事を辞めようかなと思い始めたのも、ちょうどその頃だ。仕事を辞めれば当然、収入はなくなる。貯金が徐々に減る不安と焦燥感は、ニートの時に嫌というほど心に刻みつけられた。どんなに足掻いても家賃は毎月、貯金を削っていく。この出費をいかに抑えるかで、心の余裕が変わってくる。

今の部屋の家賃は、立地条件を考えるとかなり割安だ。今は通勤していないが、派遣先の職場からでも頑張れば歩いて帰れる。家賃相応に部屋は狭いし、建てられてから半世紀近くが経つだろう。住人は得体の知れない独身中年男性が過半数を占め、残りは若い外国人が住んでいる。枯れゆく中年と異国の地で萎縮する外国人しかいないためか、生活音に煩わされることはあまりない。強いて言えば、真夜中に私がオンラインゲームで癇癪を起こし、咆哮した時ぐらいだ。すでにゲームはアンインストールしたので、静穏な日常を満喫している。

この部屋で死ぬつもりはない。いつかは終の棲家を探しを始める。来年、仕事を辞めたら、終活の準備をしようと思う。誰かに残す遺産はないし、消去すべきハードディスクの中身もない。葬式を開いてくれる人はいないだろう。そのまま焼かれて無縁仏になるつもりだ。唯一、膨大な数の日記帳の処分に困る。粗大ゴミで処分されるよりは、妬み嫉みの詰まった呪詛の塊を、誰かに送りつけてやろうか思っている。読んだら最後、一生心に深いダメージを負う悲哀に満ちているが、悲しいかな字が汚すぎて書いた当の本人でさえ解読に難渋する。