ノマド探求

二次元移住準備記

重力を体感する。

ボルダリングを初体験した。ボルダリングをやってみた動機は、登攀技術の向上に役立つのではと思ったからだ。去年、両神山に登った時、鎖場で手と足をどうやって使えば良いか分からず、四苦八苦した経験がある。滑落する危険が高い山に登る気はないが、それでも中級以上の登山コースだと鎖場が避けられない時がある。今の季節は年配の登山者が滑落するニュースを頻繁に耳にする。山登りを長く楽しむには、怪我をしないための技術と知識を習得した方が良いと考えた。

今週は夏休みで、空いている平日のお昼を狙って、元同僚と一緒に都内にあるボルダリングジムに行った。手作り感満載の簡素なジムには、シャワーもなく、ボルタリングに必要な最低限の設備だけが備わっていた。昼前に到着した時点で客は一人。ほぼ貸し切りという状態。個人的な経験と偏見から、専門店には無愛想な店員しかいない印象だったが、対応してくれたお姉さんはものすごく感じが良かった。

入会登録を終え、ジムのルールを説明したビデオを鑑賞した後、手始めにまずは超初心者コースに挑戦。指とつま先で体を保持するための突起が掴みやすく、ガシガシと登れた。次に一番下の八級のコースに挑戦。これは指とつま先を置く突起が超初心者コースより浅く小さくなり、コースの半分ぐらいは難儀した。登り始めて一時間ぐらい経つと握力もなくなり、体を保持するのさえきつくなった。登るために突起から手を離したくても離せず、重力で地球の中心に向かって引っ張られていると痛感した。次第に集中力も切れ、登り終えた後の降り方も雑になり、このまま続けると怪我をする恐れもあり、終了。元同僚が海老反りになりながら難易度の高いコースに挑戦するのを眺めながら、しばらくスポーツドリンクを飲んでボーッとしていた。ジョギング以外に体を動かしていなかったので、久しぶりに筋肉を酷使する充実感が心地良かった。

お昼を越えたぐらいにチラホラとお客も増え始め、二時間強でジムを出た。あまり体を動かした気はしなかったが、お腹は空いた。近くのタイ料理屋でご飯を食べてから、もう一つの目的である著名なビアバーにクラフトビールを飲みに行った。運動の後のご飯も気心の知れた人と飲むビールもとても美味しく、今年になって初めて夏らしいイベントを堪能した。ボルダリングジムに一人で行くには敷居が高く、機会がない限りはたぶん行かないだろう。これが最初で最後になるかもしれないが、自分の限界が分かったのはとても有意義だった。