ノマド探求

二次元移住準備記

何もしない夏。

海外旅行にも行かず、友達と飲みにも行かず、何もしないまま夏が終わりそうだ。夏休みは海外旅行をすると同僚に伝え、軽い顰蹙を買っていたが、そもそも旅行先と考えていたベトナムが日本人への渡航制限を解除しないため、今年は夏を過ぎても無理そうだ。少し前まで季節外れの薄ら寒い日が続き、あまり夏を意識せずに過ごしていた。それがお盆前辺りから真夏日に変わり、強烈に季節を意識するようになった。学生の頃は、八月は丸々学校が休みになる。楽しい季節だと刷り込まれているからなのか、この歳になっても夏になるとワクワクしてくる。蒸し暑い夏の匂いを嗅ぐと気持ちが高揚し、活動的になるのだ。特に最近の暑い時期は軽いスコールもあり、東南アジアで過ごした弛い旅情を思い出す。

学生の人は夏休みも少ないし、どこにも行けないしで、楽しく甘酸っぱい思い出を残す機会を逃し、さぞや残念だと思う。まして夏前に内定を取れた就職活動中だった大学四年生は、人生最後の自由時間を満喫するどころか、家で鬱々と無聊をかこつ事態となり、反動ですぐに会社を辞めてしまわないか心配だ。彼女彼氏がいる人は、まだいい。緊迫した状況下で愛が燃え上がり、ずっとチンチンマンマンして甘い夏を過ごせる。しかし、学生生活で溜まりに溜まった性欲を発散しようと、この夏の思い出作りに一発の打ち上げ花火を狙った学生さんは、家で粛々と自らを慰めるハメになる。バームクーヘンのように厚塗りされる彼らの妄想と欲求不満を考えると、憐憫を禁じ得ない。

私が学生だった頃は、夏休みをどう過ごしていたかと言えば、格別の記憶はない。その時は時間を自由に使える価値が分からず、朝早く起きなくても良いから楽だなぐらいしか思わなかった。普段から勉強も運動もせず、ぐうたらと過ごしていたので、学校に行っても行かなくても生活はたいして変わらない。夏休みが始まり、しばらくの間は解放感に浮足立ち、色々と壮大な計画を立ててみるが、それを実行した試しはない。そのうち夏休みにも飽きてしまい、気持ちは冷めてしまう。非日常が日常に変わると、そんなものなのだろう。日記をつけながら旅行をするノマドワーカーに憧れているが、気儘な日常に慣れてしまえば木賃宿を泊まり歩く日雇い労働者のように気持ちが倦んでしまうかも知れない。堅実な労働の合間に取る一、二週間程度の夏休みで非日常を満喫した方が、旅行は楽しめると思う。