ノマド探求

二次元移住準備記

仕事への不安が募る。

嫌味一つ言わない人畜無害の同僚に恵まれ、毎日自宅で音楽を聴きながら安穏と働いていても、仕事に不安が募る。労働を単にお金を稼ぐ手段と考えれば、そこまで不安はない。今のところ派遣元は長期で契約更新を望んでいるらしいし、例え契約を切られたとしても、次の職場はすぐに見つかるだろう。個人的な経験則だが、派遣先の職場で良好な人間関係を築けさえすれば、次の職場は派遣先が手配してくれる。派遣元の営業が探すのではなく、派遣先の上長や同僚が色々と世話を焼いてくれるのだ。職務経歴書に書かれたカタログスペックよりも、信頼の置ける口コミの方が、派遣の仕事探しでもモノを言う。養う家族も追われるローンもない独り身には、さしたる待遇は必要ない。

仕事にまつわる不安は、単純に二つに分けられる。純粋に胃袋を満たすだけの仕事と自己実現や承認欲求を叶えるための仕事だ。一つ目の目的は、それこそ食い扶持と寝床さえ確保できれば、満足できる。築浅の小綺麗なアパートに住み、毎日オリジン弁当松屋で好きな物を食べられるお金は、都心部でアルバイトをすれば充分に稼げる。毎週末、友人と居酒屋で酒とうだつが上がらない愚痴を交わすぐらいの余裕もあるだろう。ただ、二つ目の目的は事情が異なる。好きな事ややりたい事を仕事で実現するのは、恐ろしく難しい。そもそも二つ目の目的を追うと、一つ目に当たる労働本来の目的を叶えるのが難しくなる。その例は、漫画家、役者にバンドマン、ノマドワーカーと枚挙に暇がない。大企業の歯車であっても、その事情は変わらない。

個を殺して自分の時間を換金すれば、お金は楽に稼げる。しかし、二つ目の目的では、換金対象の時間は自分の手元に残しつつ、お金を稼ごうとする。めぼしい売り物が並んでいない屋台で、何を買えばいいのか。趣味やライフワークだと、仕事と切り離せば心は軽い。ただ、物事はそう簡単ではない。好きな事でお金を稼げ、お金を稼ぎながら好きな事をしろと、承認欲求が駆り立てるのだ。仕事への鬱憤がモヤモヤしている間は、酒や博打、風俗で気を紛らわせ、勢いに身を任せて何も考えずに働ける。そして、心が静まり目の前のモヤモヤが晴れると、今度はこんな自分でいいのかと不安が募ってくる。